日本列島域における先史人類史の総合的復元方法の研究

科学研究費補助金(学術変革領域研究(A))および(基盤研究(B))(領域・研究代表者:山田康弘)のブログです

文部科学省科学研究費補助金 学術変革領域研究(A)に採択されました

 この度、私共提案の共同研究「日本列島域における先史人類史の総合的復元方法」(領域代表:山田康弘)が、学術変革領域研究(A)に採択されました。

 

 今回の大型科研費では各計画研究の研究分担者を含め総勢48名の研究者が、Integrative bioarchaeology(統合生物考古学)の確立と展開を目指して、以下の三つのカテゴリーに分かれ、それぞれ11の計画研究を推進します。

 

A班:日本列島域における先史人類社会の分析
A01班:考古学的方法による先史人類の社会構造の研究(班長東京都立大学教授・山田康弘)
A02班:ゲノム・形質による先史人類間における遺伝的関係性復元の研究(班長東京大学教授・太田博樹)
A03班:同位体分析による先史人類の年代・食性復元・移動の研究(班長東海大学講師・日下宗一郎)


B班:日本列島域における先史人類の拡散と地域性の形成
B01班:日本列島域にいたる先史人類・文化的集団の形成過程に関する研究(班長東京都立大学准教授・出穂雅実)
B02班:北海道域における先史人類および文化の形成(班長北海道大学教授・加藤博文)
B03班:琉球列島域における先史人類および文化の形成(班長琉球大学教授・木村亮介
B04班:本州・四国・九州域における先史人類および文化の形成(班長国立科学博物館研究員・神澤秀明)
B05班:先史人類の人口動態に関する研究(班長立命館大学准教授・中村大)


C班:日本列島域における古環境の形成と先史人類の適応
C01班:日本列島域における古環境変遷の研究(班長国立歴史民俗博物館准教授・箱崎真隆)
C02班:先史人類による人為的環境形成(動物相を中心に)(班長北海道大学准教授・長田直樹)
C03班:先史人類による人為的環境形成(植物相を中心に)(班長岡山理科大学准教授・那須浩郎)

学術変革(A)につきましては、今後正式なHPを立ち上げ、そちらに内容を移したいと思います。

基盤研究(B)につきましては、引き続きこちらのブログで新たな研究成果や各種情報を発信していきたいと思います。

 

「ライフヒストリー:サルとヒトの誕生・成長・死」の報告書が刊行されました。

 昨年10月30日に開催されました、科学研究費補助金基盤研究(S)「社会性の起原と進化ー人類学と霊長類学の協働に基づく人類進化理論の新開拓ー」における公開シンポジウム「ライフヒストリー:サルとヒトの誕生・成長・死」の報告書が完成したとのご連絡をいただきました。

 非常に刺激的なシンポジウムで、私も「縄文人の死生観」と「縄文人ライフヒストリー」の二本を発表させていただきました。また、私にとってはこれまでの考古学的仮説を民族学的な知見によって再検証させていただく場ともなりました。報告書はDL可能とのことですので、よろしくお願いいたします。

sociality.aa-ken.jp

東北縄文人骨探訪

本日は、宮城県東松島市にある奥松島縄文村歴史資料館にうかがいました

ここは有名な里浜貝塚のあるところです。里浜貝塚寺下囲地点からは、1918年に松本彦七郎博士が発掘調査を行い、16体の埋葬人骨が地点的にまとまって出土しています。この人骨群をめぐって、古くから多くの考古学者・人類学者が研究を行ってきました。その意味で縄文墓制研究のベンチマークとなるような場所です。

今回、里浜貝塚と室浜貝塚から出土した人骨を実見させていただき、抜歯など様々な属性を確認することができました。

資料的にも大変興味深く、今後様々な分析・検討をさせていただければと思います。

 

奥松島縄文村歴史資料館にて

 

太田博樹先生の本が刊行されました。

 

 本科研費の分担研究者である太田博樹先生の著書『古代ゲノムから見たサピエンス史』が、吉川弘文館より刊行されました。古代DNAの分析方法から、その適用範囲、何が判るかといった点について、ご自身の体験談を交えなから解説してくださっています。私たちが行ってきた一連の科研費による研究も取り上げられています。

 早速斜め読みしてみましたが、ワクワクしながら読み進めることができました。分野が分野ですので、専門用語など難しい語も出てきますが、現在の到達点を知るためには、格好の書籍です。

『古代ゲノムから見たサピエンス史』

 

蜆塚貝塚から出土した男女合葬人骨を確認に行きました

本日は、蜆塚貝塚出土の4・5号合葬人骨を実見しに、浜松市博物館へ参りました。

この事例は、5号男性人骨(Sh4)が4号女性人骨(Sh3)を腕枕しているかのような埋葬形態をとっているので、夫婦の合葬例などと考えられたものです。

報告書はすでに読み込んでいたのですが、実際に実見してみると様々なことがわかりました。やはり実物を確認することは大事ですね。

今後、形質の再検討とともに、年代測定、同位体分析などの理化学的分析を行い、先の仮説を検証していきたいと思います。

蜆塚貝塚4・5号合葬例。男女の合葬例です。出典は報告書です。

 

蜆塚貝塚出土人骨の分析を始めました

静岡県浜松市に所在する蜆塚貝塚からは、多数の人骨が出土しています。

これらの人骨は、群集して一つの墓域を形成しているのですが、興味深いのは男性と女性で頭の向きをほぼ逆に変えていることです。このことから、縄文時代の性的区分の例としてしばしば取り上げられます。また、若い男女が合葬され、男性が女性を腕枕する形で埋葬されていたことから、これを夫婦の合葬例と見る向きもあるようです。

 まずは年代測定をさせていただき、食性分析でどのような食料を摂取していたのかシミュレーションをします。その後、可能であればDNA分析へと進みます。どのような結果が出てくるのか楽しみです。

 

 写真は東京大学総合研究博物館で、人骨の鑑定とサンプリングをされている近藤修先生と米田穣先生です。研究の最前線にいらっしゃる先生方に試料採取をお願いするという、ものすごく贅沢な研究をさせていただいています。感謝、感謝。

 

公開シンポジウム「ライフヒストリー:サルとヒトの誕生・成長・死」が開催されます

10月30日に公開シンポジウム「ライフヒストリー:サルとヒトの誕生・成長・死」が開催されます。私も登壇いたします。内容は以下の通りです。

 

科研費プロジェクト「社会性の起原と進化:人類学と霊長類学の協働に基づく人類進化理論の新開拓」では、霊長類学,生態人類学,文化人類学,そして考古学の視点から,ライフヒストリーを考え,比較検討を行います。具体的な討論テーマとして,1.ライフヒストリー,2.成長育児,3.死生観の三つを設定しました。ライフヒストリーとライフイベントについて,霊長類,先史人類,現生人類それぞれの特徴や共通点を洗い出し,それによって,ライフヒストリーとライフイベントを進化史的に考察し,さらには社会性の考察を深めることを目的とします。

 

公開シンポジウム「ライフヒストリー:サルとヒトの誕生・成長・死」

■10月30日(日)13:00〜18:00

■オンライン(Zoom)

■参加費:無料

■参加登録:以下のURLから登録してください。

https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZUrce-trT0sEt2R4PutZP13TqG836Z3meXH

 

【プログラム】

司会:五十嵐由里子

13:00-13:05 河合香吏(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所) 挨拶 13:05-13:20 五十嵐由里子(日本大学) 趣旨説明

13:20-13:40 デイビッド・スプレイグ(農業・食品産業技術総合研究機構) 霊長類のライフヒストリー

13:40-14:00 山田康弘(東京都立大学縄文人ライフヒストリー

14:00-14:20 松本卓也信州大学チンパンジーの離乳とヒトのチャイルド期について:生活史の種間比較はどのように可能か?

14:20-14:40 山内太郎(北海道大学) 狩猟採集民の子どもはどのようにして大人になるのか:育児協働と子どもの狩猟採集活動

15:00-15:20 西江仁徳(京都大学日本学術振興会チンパンジーは<死ぬ>のか:チンパンジー死生学再考

15:20-15:40 山田康弘(東京都立大学縄文人の死生観

15:40-15:55 内堀基光(放送大学一橋大学名誉教授) コメント1:死者の誕生について(現生人類と現代人)

15:55-16:10 五十嵐由里子(日本大学) コメント2:先史人類の出産育児

16:10-16:25 西井凉子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

コメント3:現代タイにおける死生観

16:45-18:00 総合討論

司会:五十嵐由里子

 

大変興味深いシンポジウムで、第一線で活躍されている先生方のご発表と討論は、私もワクワクしています。