日本列島域における先史人類史の総合的復元方法の研究

科学研究費補助金(学術変革領域研究(A))および(基盤研究(B))(領域・研究代表者:山田康弘)のブログです

西尾市枯木宮貝塚の資料

先日,西尾市の枯木宮貝塚の資料を拝見してきました。お仕事自体は西尾市史関係のものですが,同時に今回の科研費による研究ともなるものでしたので,ここにあげておきたいと思います。

左の写真は枯木宮遺跡出土9号人骨に確認できる叉状研歯です。上顎左右犬歯,下顎左右第一・第二切歯が除去されており,典型的な4I型式の事例です。その上顎第一切歯に叉状研歯が確認できます。だいぶ咬耗が進んでおり,遠目には叉状研歯の人物かどうか判断しにくかったと思われます。叉状研歯の意味を問いたくなるような資料です。これについては,科研費で年代と同位体の分析を行いたいと考えています。

右側は枯木宮遺跡出土2号人骨における盤状集骨葬例です。子供の単独・複葬例で,四肢骨を四角く並べた中に肋骨を環状に置き,さらに下顎を置いたうえで四隅に頭蓋を割置くという,保美貝塚において確認された事例と全く同じ人骨配置をとっています。子供に対して成人と同じ葬法を採られていたという点が,非常に気にかかる事例です。また,右下の頭蓋破片,および上腕骨に被熱痕が確認でき,この手の葬法を行う際に火が関与していたことが判ります。この点も保美貝塚で確認されたのと同じです。盤状集骨葬は三河湾を越えて類型化されていたということが確認できる良い資料です。

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